1日で2公演の観劇しちゃいました

きのう、天王洲アイルの銀河劇場でスタジオライフ公演を観てきました。いまこの劇場では「パサジェルカ」と「死の泉」という二つのお芝居を同じ劇場で上演しているのですが、どちらも同じメンバーによるダブルキャストというハードさ。どちらか一公演の日もあるけどきのうは昼公演が「パサジェルカ」で夜公演が「死の泉」。マチソワ間は2時間20分。聞くだけでもハードですよね。見る側も一大決心で臨んでましたけど(笑)。
13時開演の昼公演は「パサジェルカ」でした。これは私、初見です。第二次世界大戦後16年。外交官の夫と赴任地ブラジルへ渡る豪華客船で、リーザは遥か大陸へと思いをはせていた。しかし次の瞬間、彼女の微笑みは激しい動揺に変わる。見覚えのあるひとりの女船客。それは夫にさえ秘したアウシュビッツ収容所の過去を蘇らせる、女囚の面影だった。名はマルタ。予期せぬ再会の船は心の闇へと滑り込んでいく」というあらすじ。アウシュビッツ強制収容所で看守をしていた女性と収容されていた女性が、戦後再び出会ってしまったところからはじまり、過去の回想と絡めながら話が進みます。全体としては薄暗いシーンが多く、長い会話によって繋がれるシーンも多く、とくに1幕は睡魔に襲われて辛かったです。でも2幕目はちゃんと起きていられましたよ。観終わっての感想としては大人じゃないと登場人物の微妙な心情は理解できないだろうなという感じかな。迫害する側の人と迫害される側の人間の一口には語れない心理が描かれていて、興味深かったです。細かいところでは、アウシュビッツで弱りきって足腰ヨロヨロした囚人の様子がこわかったです。90センチ四方しかない箱に大人4人を収容する懲罰房というのも初めて知りました。入れられると座ることができず、いつまでも立ったままなんですよね。そんな恐ろしい光景がシルエットで映し出されて、考えさせられることの多いお話でした。ただ、やっぱり睡魔必至の作品ですね。幕間の休憩がなかったら覚醒できなかったかも。第1幕1時間10分、休憩10分、第2幕1時間10分でした。
15:40くらいに終わったので早めの夕食をとったり少しショッピングをしたりして次の観劇に備えました。
さて、18時開演の「死の泉」。これは初演を見ています。私としてはこっちがメインでした。淡々としたパサジェルカに比べ、死の泉はドラマチックでスリリングな展開の作品。約3時間の長丁場ながら睡魔に襲われることもなくのめりこんで観てしまいました。この作品もパサジェルカとほぼ同時代のお話です。「舞台は第二次大戦下のドイツ。 私生児をみごもりナチの施設(レーベンズボルン)の産院に身を置くマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。 しかし、激化する戦火の中、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに」というのがあらすじ。クラウスがカストラート(去勢によりボーイソプラノを保った男性歌手)を育てることに情熱を傾けているというのがこの物語の狂気の一端でもあります。初演ではマルガレーテにそれほど強い印象がなかったのですが、今回の三上俊くんのマルガレーテはほんとに女性っぽくてきれいでした。そしてやっぱり彼女が話の中心なんだなーと納得しました。初演ではフランツとエーリヒ兄弟の美しさに目が釘付けでほかの印象が薄れてしまったのかも。でも演出や脚本も結構変わってたように感じました。とにかくストーリーが頭にすんなり入ってくるんですよ。死の泉ってこういう話だったんだーって。登場人物のそれぞれの想いがとてもよくわかって胸が痛みましたね。なによりもラストシーンが美しかったなぁ。これ、初演はこんなんじゃなかったはずです。誰が誰を産んで、この人とこの人はどういう血縁で、などという親子関係が非常に入り乱れた話なのにラストでスッキリと解明されます。狂気と悲劇と愛の物語です。できれば原作も読みたいです。分厚いけど。第1幕1時間25分、休憩10分、第2幕1時間25分でした。
そしてこの日はトークショーがついていました。舞台の裏話でもするのかと思ったら「舞台の中心で愛の歌を叫ぼう」という企画で、6人の役者さんが好きな詩とか自作の詩とか、劇中のセリフとか、絵本の朗読とか、してくれました。これが意外に楽しかったです。
あ、そうそう。今回のとくに印象に残った役者さんたちを書いておきます。「パサジェルカ」では船見くんのダンス。冒頭に5〜6組のカップルが一斉にワルツかなにかを踊るんですが、船見くんの立ち姿の美しいこと。姿勢がとてもきれいでついつい見とれてしまいました。「死の泉」では青木くん。モニカという女性役でしたが、とにかくよどみなく喋り捲ってました。マルガレーテ相手にけんかをふっかける場面は圧巻。凄まじくてこわいくらいでした。あと、吉田くんもブリギッテというなかなか狡猾な嫌な女を熱演。嫌なやつなんだけどすごいなーと感心しちゃいましたよ。あとは言わずもがなのマルガレーテ三上俊くん。心優しい女性なんだけどやはり耐え難い試練に翻弄されていく様子がもうね、哀れで。でも最後はきっと幸せだったのかなと。納得させられた演技でした。 終演後のトークショーでは進行役の藤原さんが三上くんにメロメロでした。「いつも袖から出て行くときのうなじに見とれちゃって。。。」とか「そんなに見つめられると照れちゃう」とか言ってて。でもほんとに女性にしか見えないくらいきれいでしたよー。普段の声はそうでもないけどお芝居で声を張ると女性でもアリな声に変わるんですよ三上くんは。そういう点でも恵まれた人ですね。